①(公社)日本眼鏡技術者協会から特例講習会まで
(20年以上、技協の教育を担ってきていかがでしたか?)
米国オプトメトリストの津田先生から声がかかって、「従来のブルー教育から変えて、より専門的な教育を始めたい」と言われた。身が引き締まったのを思い出す。既に現場に出ている人たちの技術をブラッシュアップするために、基礎から初めて応用まで。繰り返しやるべきこと。そのために全国共通のテキストも作りたい。第一回目のテキストも担当して眼鏡学校の風見先生と作った。大転換点だった。自分としては、まだ国家資格などは視野に入ってなかった。最初の頃は受講者の数がすごく多かった。あちこちで、午前と午後同じ講義をやった。途中からだんだん減っていった。当時から、技術をしっかりしなければいけないと言う意識の人とそうでない人がいた。全体としてブラッシュアップされたと思う。
数年後、自分が教育部長になった時から少し方針を変えた。売り上げに結びつくような話を少し入れるようにした。理屈があるとしても、実際の現場でどのようになっていくのか、どのように活用するのか、どう違いがあるのかを。聴講者は集中して聞いていたように思うし、良い反応をもらえたと思う。
現在の国家検定資格も、現場離れしている試験内容だと問題がある。例えば加工とか。視力の測定を例に挙げると、クロスシリンダーなどはどんなに自動化されても基本内容は変わらない。ただし自動化で精度が上がるようなテクノロジーが導入されていくと事情が変わる。従来のレチノで他覚値を取って手持ちのクロスシリンダーでやる測定とでは、おのずとチェックポイントが変わる。検定試験は、あくまでもベースの内容だが、会得していれば、どんなにハイテクなものになっても応用が効く。
(技能士検定はどのように取り組みましたか?)
眼鏡作製技能士の特例講習会を担当するにあたり、自分を含め誰が担当しているかと言う事はオープンにしないことにしてもらった。応募人数が増えるほどに、プレッシャーが増していった。検定の問題を用意するのにも調整に苦労し、突発性難聴になった。眼科の先生に問題作成をお願いする折衝もかなり気を使った。問題の難易度を遠回しにどう伝えるか、夜中に起き出して考えた。眠れなかった。眼科医会と眼科学会の監督にも耐えた。眼鏡技術者が得意な分野、フレームやレンズなどで点数を稼ぎ、慣れない分野で少し外しても点数が取れるように配分を工夫した。もう「合格作戦」。眼科の専門家から見たら、あれこれ結構難しいことを勉強しているなと思ってもらえるように問題文を工夫するのが大事な仕事になった。たくさんの人に合格してもらえた。
(眼鏡技術者協会での教育はやりきれましたか?)
やり切れた。気持ちは非常にすっきりしている。役目を充分果たせたと思う。
(日本メガネ協会のリカレント教育のほうはどうですか?)
やりがいを感じている。頼れるメンバーもいる。もっと増やしたいけど。
②眼鏡作製技能士のこれから
(視力測定するときに、どんなことを心がけていますか?)
オートレフの結果を見て、お客様のコノイドがパッと思い浮かべられたらこれは大丈夫。レンズを入れて前焦線後焦線がどうなっているか。お客様の返答や反応を見ながらどうやっていくかここが腕の見せ所。微妙なニュアンスを読み取る、これはAIはまだできないと思う。この点で調節は厄介、見えない幽霊のような。それをコントロールとするというのが醍醐味。
調節がなるべく入らないようにするために本人(被検者)にリラックスしてほしい。そのために視力測定はもっとウキウキワクワクするような感じがいい。家族も近くにいたりして、今こんなことやってるんですよって。あなたも測ってみませんかって。さっきこんなの見せてたんですよって言う感じで。(眼科で目薬をさして散瞳させて調節麻痺をさせて、これってかえって緊張させるかも。) 両眼開放でハンフリスすればかなり調節をリラックスさせられる。測定時の言葉掛けによっても、測定結果が違ってくる。
(内田が考える「目指すべき眼鏡技術者」とは?)
近業が増えていて若い人は調節に負荷がかかっている。そうなるとせっかく眼鏡を作っても調子悪い。調節ラグがマイナスになるような状態。生活環境、目の使い方がどうなのか、眼鏡でどうサポートしていくか判断できる眼鏡技術者になってほしい。
(眼鏡作製技能士を目指す方、向上したい方へメッセージをどうぞ)
検定試験はそんなに難しくない(技術者協会のSS級はもっと難しかった) 。毎年発表される1級の合格率は悪い。大量に受験させた会社の受検者が学科試験で落ちたのが大きい。試験をまだ受けちゃいけないような人が受けている。モチベーションがあって、基礎からちゃんと勉強していればちゃんと取れるはず。
出題する側からの見方もわかるので私にお問い合わせくださればアドバイスさせていただく。過去問からどのように紐といていくかも。落とすための試験ではないので、テキストからどのように問題を作るか慮る。私がセミナーをしたある会社の社員たちは眼鏡学校を卒業していなくても集中して学んで合格した人もちゃんといる。
実技の加工とフィッティングは動画で公開されている。どこを見られているのかはが大切。問題は視力の測定。検定員の技量はとても大切で、誰がやっても同じ検定結果になるようにレベルを高め、保っていってほしいと思う。
合格するため、実技試験を受ける人は「やってる感」をしっかり出してほしい。どこでやってる感を出すか、それはたくさんある。運転免許と同じ。どのぐらい体をしっかり動かして確認している感を出すか、それによって合格する。言葉と体の動きを駆使する。
眼鏡技術者協会を辞めて、これから技術者をどのようにサポートしたいですか?
試験をどうやって突破するかと言う事は、これまで関わってきたので、どうぞお任せくださいと言う気持ち。そして特に実際に遠近両用でどのように売り上げを伸ばしていくか、新しい機械を使いながら駆使してお客様の信頼度を上げながら接客するか。実店舗で測定を行い度決めをするということもやれる。OPDの活用も必須になってくる。21世紀の道具と考え方とやり方がある。いろんなトライをしつつ、お客様についてきてもらえる眼鏡店を応援したいと思う。
(いつもおっしゃっている「勉強はお客様のため」ですね。ありがとうございました。)
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